相続に関する財産の承継手続き

相続が発生した場合、次の財産の承継手続きを所定の期限内に行わなければなりません。

できる限り迅速に銀行預金・郵便貯金の承継
株式・社債等の有価証券の承継
不動産の承継
自動車の承継
3ヶ月以内相続放棄
10ヶ月以内相続税の申告と納税

相続に関する専門家の種類とその特徴と担当する専門分野

1宅地建物取引士

宅地建物取引士とは、宅地建物取引業者で働く従業員をイメージすると分かり易いでしょう。宅地建物取引業者とはいわゆる不動産会社のことです。そこでは土地や建物の売買、賃貸物件のあっせんなどを行っています。
不動産取引はとても高額な取引です。クライアントの多くは不動産に関する専門知識や売買経験を持っていないため、不当な契約を結んでしまうと思わぬ損害を被ることがあります。そのようなことがないよう、クライアントが知っておくべき事項(=重要事項)を説明するのが宅建士の仕事だとされています。相続税が高額の場合、相続財産の中の現金だけ納税することは難しいと思われます。相続財産の中に不動産が含まれている場合、そちらを売却して現金化する必要があります。不動産売買を迅速にかつ安全に行うためには、宅地建物取引士の協力は不可欠です。

2司法書士

司法書士は、主に登記手続き(不動産登記及び法人登記)の代理業務を行っています。登記に関するプロフェッショナルで、登記に関しては司法書士の方が弁護士よりも専門性が高いと思われます。また、裁判所に提出する公的な書類作成や、成年後見に関する手続きも行っています。そして認定司法書士に限り、目的の価額が140万円以下であれば簡易裁判所での手続きの代理が可能です。相続財産にはほとんどの場合、不動産が含まれていますので、相続に関する手続きでは欠かせない専門家の一人です。

3税理士

税理士は税務(確定申告、青色申告の承認申請、税務署の更正・決定に不服がある場合の申立てなど)に関する代理業務を行います。税務相談にも応じ、贈与税や相続税の節税対策・納税対策を行ったりしています。そして、税務調査が入ると、その調査にも対応して、顧客の権利を守ることも税理士の大切な仕事とされています。所得税の準確定申告や相続税の算出・申告など、相続と税金は切っても切れない関係です。 当然相続手続きでは不可欠な人材であり、納税対策は税理士が主導することになると思われます。

4土地家屋調査士

土地家屋調査士とは、依頼を受けて、不動産の「所在」、「形状・面積」、「用途」などを調査・測量し、必要な図面や書類を作成して「表示に関する登記」の申請手続などを行う専門家です。
不動産登記には、「表示に関する登記」と「権利に関する登記」の二つの種類の情報が掲載されています。このうち後者の登記は主に司法書士が行い、前者の登記を土地家屋調査士が行います。このため、建物が新築されたりすると、土地家屋調査士と司法書士がタッグになって動くことがしばしばあります。「表示に関する登記」とは、土地や建物の位置や面積、用途などが登記簿上に明らかにされている部分で、「権利に関する登記」の前提と言えます。「表示に関する登記」がしっかりされていないと、当然不動産の名義変更はできず、それ故、不動産の売買取引も不可能となります。相続財産の中の建物で登記がされていないものがしばしばあります。土地についても測量が行われていないものがあります。相続を機に不動産の名義変更を行い、売却する場合は、どうしても土地家屋調査士の力を借りなければなりません。無視できない専門家です。

5弁護士

誰もが知っている法律のプロフェッショナルです。紛争性のある事案について法律事務を業とすることは、弁護士にしか認められておらず、弁護士資格を持たない者が、報酬を得る目的で、紛争性のある事案について法律事務を行うと「非弁行為」となり、処罰の対象になります。このように弁護士は業務について強い独占性を有しており、遺産相続の際、相続人間の話し合いで円満解決できない場合や、遺産の中に高価な不動産や骨董品、宝石などがあるなどして、話し合いが容易にまとまらない場合には弁護士に依頼して相続人間の意見調整をお願いすることがあります。相続人が複数いる場合、遺産分割協議をまとめることに時間がかかることがあります。この遺産分割協議が完了しないと、不動産の売却はもちろん名義変更さえ出来ず、納税資金を用意できないまま相続税の納税期限を超過することになってしまうことがあります。そうなると、最悪の場合、相続税に利子がつけられ、相続人はより多額の相続税を納めなければならなくなり、結果として相続人みんなが不幸に陥る可能性さえあるのです。長期化した遺産分割協議は紛争性を帯びているため、弁護士に依頼しなければ相続手続きを前進させることができません。相続を「争続」という言葉で表現する機会が多い昨今、やはり弁護士の存在は相続手続きにおいてなくてはならない存在です。

マンガで知る専門家スマート・マッチング